おやつにハニワは入りますか?season2

今はハニワよりも土偶にハマっている。

#「染、色」感想

東京公演の千秋楽を迎えた舞台「染、色」。

ありがたいことに2回行くことができました。感謝。

 

演出が「グリーンマイル」の瀬戸山さん、原作・脚本がシゲちゃん、というなんとまあすごいっすわ…(小並感)という感想を抱きつつ、主演が正門くんと聞いた時はさらにびっくり。

朝ドラ「スカーレット」で正門くんの演技は見ていたんですが、その時は良い意味でぱっと見でジャニーズだと分からなかった。一緒に見てた母も同じでした。

さて、スカーレットの時と今回とでまた顔が変わったのか、「染、色」のフライヤーとかAぇの動画とか見ても「この子ほんとにあのスカーレットの子なの?!?」って何回も聞かれました。ワシも聞きたい。

なので演技に関しては全く心配してなくて、「あの胸糞原作がどうなるんだろ〜」くらいの気持ちで行きました。

原作は正直好きじゃない作品なので(そもそもあの短編集全体があまり好きでなかった…)、読み返すのが大変だった(笑)

 

そして見たらですよ。

話の大筋は原作通りですけど。

だいぶ舞台版で変わってまして。

読み返す必要あったか!?と思うレベルでした。なのでこれから見に行く人は読み返さなくてもいいと思うけど、違いを楽しむには是非読んでいってください。どっちでもいいです。

…でもシゲちゃんの脳みそ感じたいなら原作読んでった方がいいね。

 

さてここからは本編の話なのでネタバレがありますので気をつけてくださいね。

見たくない人はさよなら!

 

 

 

さて話の大筋としては、主人公がグラフィティアートを通じて刺激を受ける相手に出会い別れる話、です。そこは全く変わってない。

 

しかし、登場人物の名前が変わっている。市村は深馬に、美優は真未に。

さらに北見と原田という深馬の同級生と、滝川という教授も登場する。

ただし、杏奈は変わらず杏奈のまま。

 

そして大きく異なるのが、真未(原作では美優)が「実在しない人物」として描かれていること。

最初見た時はすごく驚いたけど、その辺がすごくシゲちゃんらしいどんでん返しだな(笑)と思ってマスクの下でニヤニヤしてしまいました。多分皆さんが「とても加藤シゲアキらしい話だった」という理由の一つがここだと思ってます。

 

あとは時系列関係なく思い出したところをちょいちょい書いていきます。

 

1.服装について

まず主人公の深馬の服装が、白、ベージュ、黒、グレー、白、ベージュ、と変化していきます。一方、真未は終始黒い服を着用しています。

この変化は真未に染められていく深馬の状況を分かりやすく表したもので、黒くなった時が1番真未に毒されてます。

初めに衣装が変わるところは、ゼミ室で深馬、杏奈と良い雰囲気になったところです。キスしようとしたところ、原田の卒論用風船が割れてびっくりした深馬と杏奈がよろけ、深馬の作品がキャンバスから落ちそうになります。それを支えようとしますが、キャンバスに深馬の腕が当たり腕に色が着く。その次のシーンからベージュのシャツを羽織るようになります。

ちなみにこの「腕に色がつく」というのはところどころで出てきます。

 

シーンが進み、真未の家で2人がまぐわった後は、深馬も黒い服になり、言動も前半に比べ激しくなっていきます。

ところで、ここのまぐわうシーンでは、深馬はベージュですが、真未は白っぽい部屋着になります。最後のシーンでも真未は白いワンピースを着用していますが、それ以外ではここだけ、黒以外の服になります。

 

詳しくは割愛しますが、その後熱中症で深馬は倒れ1週間寝込みます。その時は長袖のグレーのパーカーを着ています。

ところで長袖の時点で、夏は過ぎ秋に差し掛かっているのでしょうか?

その後一時は白い服になりますが、最後のシーンではベージュになり、泣くような声で杏奈に「これから会えないかな」と原作通りのセリフを吐きます。その後ろでは桜吹雪の中佇む真未(白いワンピース着用)。

 

さて、そのほかの登場人物の服装についてですが、北見と原田と滝川はほぼ同じ衣装です。私服1、私服2、スーツ、の3パターンくらいしかなかった記憶です。

一方、一番着用衣装が多いのが、杏奈で、就活時のスーツはもちろん、私服が3パターンくらいあります。でも杏奈の服装も半袖が多いから時系列わかりにくい…。

 

話は深馬と真未の服装に戻りますが、色からしても、深馬と真未は正反対のものであり、同じものでもあるということは読み取れます。そして、白と黒、というのは一般的には「生と死」に使われるもの。

衣装の色変化は、真未に影響される深馬とも取れますが、どんどん死に絶えていく深馬とも考えられますね。熱中症から目覚めた直後にグレーのパーカーを着ていますが、生と死の境目を彷徨っていたということも表しているのではないでしょうか。

そうなると真未は「最初から"死んでいる"存在」=存在しないもの、という式になるわけですが、この場合の「死」とはなにか?という話になるわけで。

話は色々飛びますが、終盤で、深馬=真未ということが明らかになります。つまり、1つのものだった。そうなると、一般的な「人が生まれて死ぬ」というものではなく、「深馬の中にかつてあった部分、過去に押し殺してきた部分」とも言えるのではないか…とも思うわけです。

 

2.秋に咲く桜

「秋に咲いた桜は、次の春にも咲いたのだろうか」、というセリフを深馬は繰り返しています。

これは原作にはありませんが、引用元はサン・テグジュペリの『星の王子さま』になります。

それをモチーフにした加藤シゲアキのソロ曲がありますので、まあそこから引用していると考えて良いでしょう。

正直ここは色々な考察と同じような中身になるのでササッと終えます。個人的にそこまで引っかからなかったので。

調べたら10月に花を咲かせる品種の桜ももありました。

今回は深馬のセリフに「ソメイヨシノ」と明示されていたので、これは「ソメイヨシノの狂い咲き」のことで良いでしょう。

「狂い咲き」は何らかの原因で葉を失い、システムが狂わされて異常発生のように花が咲く事。場合にもよりますが、全ての花が咲くわけではないので、次の春に持ち越して咲く花もあると。(参考はこちらhttps://art-sentei.com/4201.html

さて、深馬はどう「狂い咲いた」のか?

それは「入学時に首席で入学したところ」なのか、北見の言うように「1~2年は内から溢れ出るものがあったのに3年からは大したことがなくなってきた」なのか。

結論、自分の予期せぬところで「才能」が認められる(=花が咲く)ことで、色々なバランスが崩れてしまった、と考えるのが1番わかりやすいのでは無いでしょうか?

個人的に、そのバランスが崩れる原因は「著名なキュレーターに認められた」ところだと思っています。

ちなみにキュレーターの名前忘れちゃったので誰か教えてください(笑)

 

3.真未の正体について

深馬がより真未へ落ちていくきっかけの1つに、キュレーターに依頼された作品が何者かの手によって壊されるという事件があります。

その場面は深馬と北見を終始撮影している原田によって撮影されており、犯人は判明するのですが…

最初にその映像が流れるシーンは、スマホに保存されて映像を原田と深馬が確認して、真実を知った深馬が真未に問い詰めるところです。真未に「なぜあんなことをしたのか」というようなセリフを述べたあと、真未がキャンバスにナイフを突き立てるシーンを見せつけられます。そして真未は「深馬がそうして欲しいと願ったからやった」と言う趣旨のセリフを述べます。真未こそが1番深馬を理解して行動しているかのように、深馬にすがりついていく。

でも深馬は真未を拒絶する。

そして真未の家を出て熱中症で倒れる。

倒れた後は真未の存在を忘れるかのような日常が過ぎ、杏奈の家で過ごすようになる。

そして居酒屋のシーン。深馬は留年を選択し、北見と原田は就職することになった。そこで、深馬と真未のユニット「ポリダクトリー」(原作で言う「HANDS」)のことを深馬が話し出すと、どうも2人と話が噛み合わない。

調べると、「ポリダクトリー」はキュレーター主催の大規模なアートイベントだという。

さらに、深馬の作品を壊した犯人は実は深馬自信であったことも明かされる。(原田のスマホにある映像を再生するとその映像が流れる、という演出)

そして北見か原田のセリフ「まだ治ってないんだな」(だったと思う)、で「おかしかったのは深馬の方だった」ことがはっきりする。

その後は、原作に登場する「美優(真未)の後を追いかける再現シーン」なのか、はたまた舞台版用の「実際はこうだったという再現シーン」、どちらを表現しているのかと言うとどっちでも捉えられそうですが、終盤の真未の家に行き深馬が自慰をして、真未に電話をかけるも存在しないことをまざまざと突きつけられ、失意の中杏奈に電話をかけるシーンは現在進行形の時間であろうと思います。

 

深馬と真未。

「みうま」と「まみ」。

「MIUMA」と「MAMI」。

「ま行だらけ」というセリフがありますが、そのとおり、名前からしても同一の存在と考えられるでしょう。

 

ところでローマ字表記にすると、深馬には「U」がある。

英語ではyouの意味で用いることがあるけど、他になにかあるのか?それとも日本語の響きとか漢字とか、それだけかな。

深読みしすぎだろうか…

 

4.グラフィティアート

ポリダクトリーが描いた絵ではっきり分かるのは、恐竜、青く燃える花、二角獣に蛇が巻きついている絵、人間の左目。

 

ここではあまり話題になってない「左目」の絵について可能性を1つ。

 

ところで原作者の加藤シゲアキさんは青山学院大学の出身である(中学から大学まで)。

なのでキリスト教、聖書の知識もある。

 

キリスト教の目の象徴って?と思って調べたら、あった。

プロビデンスの目、というらしい。

すべては神の配慮によって起こっている」という概念。

 

その他にもエジプトの神話や日本の神話にもやはり象徴として出てくる。(参考はこちらhttps://ameblo.jp/kurosio8989/entry-12634417519.html

 

「全ては神の配慮によって起こっている」。

真未が深馬の作品を壊した時のセリフ「その作品はそうなるはずだったんだよ」(と言うようなニュアンス。)に通ずるところがある…と思ってしまうのは気にしすぎだろうか。

 

5.その他思い出したやつ(適宜追加します)

・スプレー缶の音

深馬がグラフィティアートを描き始めた頃のシーン、深馬がスプレー缶を振ると音がしない。一方で真未がスプレー缶を振るとカシャカシャと鳴る。これは単なるスプレー缶の仕様(真未は腕に吹き付ける関係で本物のスプレー缶を使う必要がある)によるものなのか、差異をつけるためにこうなってるのかは分からない。

また、深馬と真未2人で絵を描いている時、初めの頃はスプレー缶を吹き付ける音が微妙に違う。でも深馬が黒い服になってからは同じ音になっているように思える。この辺りは完全に個人の感覚なので、気にしすぎて違ったり同じように聞こえているのかもしれないが、そこまでやってたら面白いな、と思う。

 

・色という漢字

ネットの漢字辞典を引くと、意味がだいたい8つも出てきた、

いろ。いろどり。色彩。

顔いろ。顔の表情。顔のかたち。

おもむき。面白み。ようす。

いろどる。いろをつける。

男女の間での情欲。

仏教で、感覚でとらえることができる形あるすべてのもの。

いろ。愛人。情人。

いろ。響き。調子。

 

ちなみに下の2つは日本古来の意味らしい。

何だかどの意味もこの作品に当てはまるような気がして面白くなってきた。

そう言えば仏教と色と言えば「色即是空」という言葉もあった。

この世の万物は形をもつが、その形は仮のもので、本質は空(くう)であり、不変のものではないという意。

Wikipedia先生によると、「目に見えるもの、形づくられたもの(色)は実体として存在せず時々刻々と変化しているものであり、不変なる実体は存在しない(空)。仏教の根本的考え方は因果性(縁起)であり、その原因(因果)が失われれば、たちまち現象(色)は消え去る。」

色即是空 - Wikipedia

え?もしかして原作も色即是空ってテーマ?というところに来ています。知らんけど。

 

6.感想

最初見た時は、とても"加藤シゲアキらしい"作品の一言におさまってしまった。原作よりも好きな改変だったし、どんでん返しがとても気持ちよかった。

プロジェクションマッピングを使った表現や、ポリダクトリーが絵を描く際の演出がコンテンポラリーの振り付けのようで、2人の熱量と動きに圧倒的された。

原作に比べて「生」と「性」の色味は薄くなったかなと思いつつ、ガッツリ深馬と真未は絡むし、舞台、ましてや演技だとはいえ、正門くんファンの心境を心配してしょうがなかった(汗)

この作品の根底の1つは、コンプレックスとか、ないものねだりとか、きっとそういう一方向への気持ちなんだろうと思う。自分に無いものを持つ人に憧れるから、杏奈は自分にはない魅力のある深馬と付き合ったし、原田は才能があり注目されていた深馬と北見に声をかけた。北見は才能を持つ深馬に憧れて杏奈への気持ちを捨てきれていない。そして深馬も、自分より自由な真未を求めるが、それは幻だった。

だから就活で失敗し続けていた杏奈は深馬に頼りたくて仕方がなかった。でも深馬は気づかなかったし、気づいても面倒くさそうにしたんだろう。しかし最後のシーンでは真未を失った深馬は「今から会えない?」と杏奈に助けを求める。

ちなみに2回目見た時に気がついたが、杏奈の部屋で鍋をするシーンでの杏奈の泣きそうな不安そうな声と、1番最後の深馬の「今から会えない?」の声がとてもそっくりだった。残酷な対比である。

ところで恐らく春〜夏の季節と推察される時期に、鍋をすることが全く理解できなかったんだけど、クーラーのついた寒い部屋では鍋をするのか?それとも深馬くん季節感ガン無視してる?ガン無視してるとしたらその時点で頭おかしくなってるよな。おーい。

 

さて人間は子孫繁栄のために自分の遺伝子と離れている人と結ばれるようになっているらしいが、そういう部分も加味して「性」なのか?とか本編にほぼ関係ないどうでもいいことも思いつつ、とりあえずこれで「染、色」感想です。

 

他にも色々書きたいことはあるので(登場人物の名前とか、シーンのこととか、飲酒シーンが多いとか…)、思い出したら適宜追加します。

 

 

長文お読み頂きありがとうございました〜